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発達支援(療育)とは?何をするのかわかりやすく解説!支援が受けられる施設も紹介します

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発達支援(療育)とは、障害のある子どもやその可能性がある子どもに対して、一人ひとりの特性にあわせて必要な支援を行うことをいいます。発達支援(療育)を受けることで、生活やコミュニケーションなどに必要な力を、子どもに合ったやり方で身につけることができます。この記事では、発達支援と療育の違いや、発達支援の対象、支援を受けられる場所、支援の具体的な内容などを解説します。

発達支援(療育)とは

発達支援(療育)とは、障害のある子どもやその可能性がある子どもに対して、一人ひとりの特性にあわせて必要な支援を行うことをいいます。厚生労働省の「児童発達支援ガイドライン」では、「児童発達支援」を下記のように定義しています。

児童発達支援は、(中略)障害のある子どもに対し、児童発達支援センター等において、日常生活における基本的な動作の指導、知識技能の付与、集団生活への適応訓練その他の便宜を提供するものである。(引用)

発達支援と療育はどう違う?

「療育」とは、もともとは身体障害のある子どもへのアプローチとして「医療」と「教育」を並行して行うことを指して使われていた用語です。現在は、障害種別を問わず、障害のある子どもの発達を支援する働きかけの総称として使われており、医療行為を伴わなくても「療育」という用語が使われます。

「発達支援」とは「療育」を発展させてできた考え方です。診断の有無に関わらず発達が気になる子どもへの支援や、発達の基盤となる家族への支援、保育園や学校など地域社会との連携など、対象を広げた働きかけや支援のことを指します。

現在、厚生労働省では「療育」ではなく「発達支援」という言葉を使っています。ただし、実態としては今でも「療育」と「発達支援」が同じような意味で使われることも多く、児童発達支援を行う施設が「療育センター」と呼ばれることもあります。

発達支援(療育)の対象は?

発達支援(療育)の対象になるのは、主に18歳以下の、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)のいずれかに該当する障害がある子どもです。場合によっては、20歳まで利用可能なこともあります。発達支援(療育)の内容はさまざまで、一人ひとりの障害の種類や特性、困りごとに応じて、必要な支援が受けられます。

公費で(公的な補助を受けて)発達支援(療育)を利用する場合は、自治体が発行する「受給者証」の申請・取得が必要です。「受給者証」については別記事で詳しく解説しているので参考にしてみてください。

発達支援(療育)はどんな施設で受けられる?

児童福祉法では、公的な発達支援(療育)を「障害児通所支援」と「障害児入所支援」の2種類に分けています。

障害児通所支援

  • 児童発達支援
  • 医療型児童発達支援
  • 放課後等デイサービス
  • 居宅訪問型児童発達支援
  • 保育所等訪問支援

障害児入所支援

  • 福祉型障害児入所施設
  • 医療型障害児入所施設

障害児通所支援について

障害児通所支援とは主に、障害のある子どもが直接事業所に通って発達支援(療育)を受ける福祉サービスのことです。「児童発達支援」「放課後等デイサービス」のほか、「居宅訪問型児童発達支援」及び「保育所等訪問支援」が含まれます。

児童発達支援について

障害のある未就学の子どもが対象で、日常生活の自立支援や機能訓練を行ったり、保育園や幼稚園のように遊びや学びの場を提供したりします。上肢、下肢又は体幹の機能の障害(肢体不自由)のある子どもに対しては、医療的なケアもあわせて提供します。

放課後等デイサービスについて

小学生・中学生・高校生の原則6歳〜18歳の障害のある子どもが対象です。日常生活の自立訓練や社会との交流、個々の子どもの状況に応じた発達支援を行うだけでなく、共生社会の実現に向けた後方支援や保護者支援も目的にしています。

保育所等訪問支援について

保育所や幼稚園、小学校などに在籍している18歳までの障害のある子どもが対象です。支援員が保護者からの依頼を受けて保育所や学校等の施設を訪問し、集団の中の子どもの行動や困りごとを観察・分析した上で支援を行い、安心して楽しく集団生活を送ることができることを目指します。

居宅訪問型児童発達支援

重度の障害等のために外出が著しく困難な18歳までの子どもが対象です。訪問支援員(保育士・看護師・理学療法士)が、居宅に訪問し、発達支援や日常生活における基本的な動作の指導、知識技能の付与等の支援を行います。

障害児入所支援について

障害児入所支援施設は都道府県が実施主体となっている施設で、身体障害・知的障害・精神障害(発達障害を含む)がある原則18歳までの子どもが入所して支援を受けることができます。

福祉型障害児入所施設について

身体面・日常生活面での能力が維持・向上できるような訓練を行うだけでなく、食事・排泄・更衣・入浴など日常生活での介護サービスを受けたり、レクレーション活動などを通して、社会活動への参加支援などが受けられます。

医療型障害児入所施設について

福祉型障害児入所施設で受けられる訓練や支援に加えて、疾病の治療・看護、医学的管理下の食事・排泄・入浴介護などが受けられます。

発達支援(療育)の方法

発達支援(療育)では、障害のある子ども一人ひとりの特性や困りごと、取り巻く状況などにあわせてさまざまな方法で支援を行います。特に発達障害のある子どもに対して行われる支援の方法としては、「個別支援」と「集団支援」の大きく2つに分けられます。

子どもの特性や困りごとに応じて適している方法が選択されますが、個別支援と集団支援の両方を組み合わせたり、成長にあわせて方法を変えたりすることもできます。

個別支援(個別療育)について

個別支援(個別療育)とは、子どもの発達課題や学習のニーズに応じて、支援員が個別に対応する支援方法を指します。1対1の環境が理想的とされますが、実際の場面では、年齢や発達の段階、課題の内容によって、支援員1名に対し2名のお子さんが参加する形で行うこともあります。この場合も、それぞれの子どもに合わせたアプローチで学習を進める点が『個別』の特長です。

個別支援のメリット

一人ひとりの特性や困りごとに合わせて、きめ細やかで柔軟な支援を受けられることが挙げられます。一人ひとりに見合った「課題」を選定することができるのも個別支援ならではです。支援員と子どものコミュニケーションを通して、子ども自身が成功体験を得やすい、支援員との信頼関係を築きやすいこともメリットだといえるでしょう。

個別支援のデメリット

同年代の子どもとの関わりのために必要な力や、集団生活を送るうえで必要な力を身につける機会がないことがデメリットです。

集団支援(集団療育)について

集団支援(集団療育)とは、子どもが複数名集まり、集団でゲームや遊び・ものづくりなどを行う支援方法を指します。同世代の子どもとの関わりや遊びを通して、集団生活に欠かせないソーシャルスキルやコミュニケーション能力を身につけます。

プログラム内容は施設によってさまざまですが、集団で行うゲームやスポーツ、音楽活動などを行う場合や、高学年になってくるとグループディスカッションやロールプレイングを取り入れる場合もあります。

集団支援のメリット

同年代の子どもたちとのコミュニケーションに必要な力が身に付くこと、園や学校などの集団生活の場において起きている困りごとにアプローチしやすいことがメリットだといえます。また、他の子どもたちの存在が刺激となって言葉が増えること、行動や感情のコントロールについて自分自身を省みる機会にもなること、園や学校の外に人間関係が増えることもメリットだと言えるでしょう。

集団支援のデメリット

集団行動に強い苦手意識を持っている子どもの場合、ストレスを感じるかもしれません。また、個別支援(療育)と比べると、一人ひとりのペースや特性に合わせてもらえないこともあります。

発達支援(療育)の5つの指導領域(範囲)とは

厚生労働省が定めた「児童発達支援ガイドライン」では、「健康・生活」「運動・感覚」「認知・行動」「言語・コミュニケーション」「人間関係・社会性」の5つの領域において、さまざまなアプローチを行うとされています。5つの「指導領域(範囲)」の支援内容は、お互いに関連して成り立っており、重なる部分もあります。

支援の大きな目標は障害のある子どもが将来の日常生活や社会生活を円滑に営めるようにすることであり、支援が家庭や地域社会での生活で生かされることとされています

① 心身の健康や生活に関する領域

心身の健康や生活に関する領域です。身の回りを清潔にすること、食事、衣類の着脱、排泄、規則正しい生活リズムをつくる、などの生活スキルを身につけ、自分で心身を健康に保てるよう、必要な支援を行います。

② 運動や感覚に関する領域

「感覚の偏りがある」「自分で自分の身体動作や姿勢をコントロールできない」ことで生じる困りごとに、アプローチします。例えば、じっとしていられず動き回ってしまったり着替えがうまくできない、などの場面において必要な力を身につけられるよう支援します。

③ 認知と行動に関する領域

「情報収集し、理解して行動する力を身につけること」「認知の偏りへの対応」などのアプローチを行います。

例えば、集団生活のなかで先生の一斉指示を聞いて動くことや、状況判断をして柔軟に動くこと、ルールを理解して遊ぶことなど、状況によって必要とされる力を身につけられるよう支援します。こだわりや偏食等に対する支援を行うこともあります。

④ 言葉、コミュニケーションの獲得に関する領域

子どもの発達段階に応じて、言葉の表出や習得、そのほかにもコミュニケーションに必要なさまざまな力を身につけるための支援を行います。手話や点字、音声、文字といったコミュニケーション手段の活用についてアプローチすることもあります。

⑤ 人との関わり、社会性に関する領域

他者との人間関係を築いたり、集団に参加したりするために必要な力を身につけられるように支援します。例えば人と関わるうえでのマナーや、集団や公共の場での振る舞い方を身につけるなど、状況に応じて必要なサポートを行います。

発達支援(療育)の主なプログラム内容

発達支援(療育)では、一人ひとりの状況にあわせてさまざまなプログラムが実施されます。施設によって、行うプログラム内容の特徴は異なります。ここでは、発達支援(療育)の場で行われることが多いプログラムの概要を紹介します。

応用行動分析学(ABA)に基づくプログラム

応用行動分析はApplied Behavior Analysisの頭文字をとってABAと呼ばれることもあるアプローチ方法です。発達支援(療育)における応用行動分析学(ABA)では、人間の行動の基本原理にもとづき、うまくいく行動を増やすことで、相対的に困っている行動を減らすための働きかけをおこないます。

うまくいく行動が出たときには「強化」(行動の直後に良いことが起きる)、困っている行動が出たときには「弱化」(行動の直後に嫌なことが起きる)を行います。また、子どもの特性に応じて困っている行動を起こしやすい環境要因を減らし、子ども自ら望ましい行動をとれるように調整するアプローチも大切にされます。TEACCHプログラム

TEACCHプログラム

TEACCHはTreatment and Education of Autistic and related Communication handicapped Childrenの略称で、アメリカで考案されたASD(自閉スペクトラム症)のある人やその家族を対象とした生涯支援プログラムです。

ASD(自閉スペクトラム症)がある方々の生活の質(QOL)向上の為に、周囲の物理的環境、及びコミュニケーション環境を生涯にわたって設計し続けるプログラムであり、自閉症による発達の凹凸を治すのではなく、凹凸のまま社会に順応できるよう包括的に個別支援することを目的とします。

TEACCHプログラムの指導方法の例として以下のものがあげられます。

  • 「物理的構造化」:環境と活動を一対にして何をするか理解しやすい環境を整える
  • 「視覚的構造化」:スケジュールや行動などの情報をイラストや写真で視覚化する)
  • 「コミュニケーション力の評価」:コミュニケーションを細分化し評価することで、現状の能力を適切に把握し対応する。
  • 「ワークシステムの構築」:作業を自立的に行えるようワークシステムを構築し、作業の内容、量、終了の条件、次の行動を簡易的なルールに当てはめて示す

SST(ソーシャルスキルトレーニング)

人が社会で生きていくうえで必要な技術を習得するための訓練のことです。

「ゲームのルールを守る」「人と会話をするうえでのマナーを身につける」「怒りのコントロール」「気持ちを適切に相手に伝える」など、子どもの状況に応じて必要なスキルを身につけるための支援を行います。具体的には、以下のような手段を用います。

  • ルールのある遊び
  • ディスカッション、ディベート
  • ロールプレイ(人との関わりにおけるある場面を想定して、実際にやってみる)
  • 共同行動(工作や調理などを、複数人で協力して行う)
  • ワークシートや絵カード(ワークシートや絵カードが表す出来事の様子を子ども自身が読むことでその場面での振る舞いを学ぶ)


扱う場面や題材は、その子どもの行動に合わせて選び、指導員が適切なフォローを行うことで子どもたちが実践的に学ぶことができます。

言語療法

言語療法とは、言葉を話したり聞いたりする機能に障害がある人に対して、日常生活を円滑に送るために行われるリハビリテーションのことです。言語療法は、英語ではspeech and language therapyと表記され、しばしばSTと呼ばれています。

発達支援(療育)における言語療法では、子どもの言葉の遅れに対してアプローチすることが多いです。子どもの言語療法では、言葉に対してだけではなく、運動やコミュニケーションなどその子どもの発達全体に働きかけるようなトレーニングが行われます。

言語聴覚士を中心としながらも、医師などの医療専門職、介護福祉士などの保健・福祉専門職、心理専門職、学校関係者など関係機関で連携して支援を行うケースが多くあります。

感覚統合療法

感覚統合療法は、子どもの感覚統合機能を促進し、日常生活での困りごとを軽減することを目的として行われます。感覚統合とは、視覚、聴覚、触覚などの異なる感覚情報を脳が整理し、適切に反応する能力のことです。

感覚統合療法は、遊びや運動を通して、感覚機能のなかでその子の発達がゆっくりなところや苦手なところにアプローチして、日常の困りごとが減るように支援します。

箱庭療法

箱庭療法は、心理療法のひとつです。砂の入った箱の中にさまざまなミニチュアを置いて自分の箱庭を作り、それによって自己表現をしたり物語を作って遊んだりします。

言葉で自己表現するのが苦手な子どもに特に適しており、安心感を得ながら自己表現ができます。作品を認めてもらうことで自己肯定感の向上が期待できたり、専門家が作品を見ることで子どもの心理状態を知ることもできます。

発達支援(療育)は必要?期待できる効果は?

子どもの成長スピードは一人ひとり異なります。発達が気になる子どもの場合、他の人と同じやり方でうまくいかなかったり人間関係のトラブルが多かったりするかもしれません。個別の発達状況や障害特性に合わせた支援・関わり方を受けることで、できることが増えたり、苦手なことに対処できるようになったりできます。

早期に発達支援(療育)を行うことで、特性自体を治療することは難しくても、いじめや不登校、抑うつ症状など、二次的な問題を予防することも期待できるでしょう。

発達支援(療育)を受けたからと言って、必ずしもすぐに目に見える変化が見られたり、家族が期待するような効果が感じられたりするわけではありませんが、時間をかけて徐々に発達支援(療育)の成果は感じられるものです。その子に合った支援を受けることで、自分らしくいられる関係性や力を発揮できる場所を増やしていけるでしょう。

まとめ

発達支援(療育)では、障害のある子どもやその可能性がある子どもに対して、一人ひとりの特性にあわせて必要な支援を行います。発達支援(療育)を受けることで、生活やコミュニケーションなどに必要な力を、子どもに合ったやり方で身につけることができます。発達支援(療育)をとおしてできることを増やすことが、子どもの自信をつけ自分らしくいられる場が増えていくことにもつながるはずです。公費で利用できるサービスもあるので、関心のある方は自治体の福祉窓口などに問い合わせてみてください。

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