放課後等デイサービスとは?支援内容や対象、利用するまでの流れについて詳しく解説!
COLUMN
放課後等デイサービスは、児童福祉法に基づく通所型の福祉サービスのひとつです。主に障害のある6~18歳の就学児童が通い、必要な支援を受けることができます。支援の内容は事業所によってさまざまです。この記事では、受けられる支援内容の例や、利用できる対象者や利用するまでの流れ、利用料の目安などについて詳しく解説します。
放課後等デイサービスとは
放課後等デイサービスは、児童福祉法に基づく通所型の福祉サービスのひとつです。主に障害のある6~18歳の就学児童(小学生・中学生・高校生)が学校の授業終了後や長期休暇中に通い、必要な支援を受けることができます。
放課後等デイサービスの目的
放課後等デイサービスは、2012年4月に始まった比較的新しい福祉サービスです。従来は「児童デイサービス」として、未就学児と就学児の区分なく障害のある子どもが対象とされていました。2012年の児童福祉法改正によって、未就学児のための「児童発達支援」と、就学児のための「放課後等デイサービス」に分かれています。
厚生労働省が公開している「放課後等デイサービスガイドライン」では、基本的な3つの役割として「子どもの最善の利益の保障」「共生社会の実現に向けた後方支援」「保護者支援」を掲げています。それぞれについて詳しく解説します。
① 子どもの最善の利益の保障
障害のある子どもに対して学校や家庭とは異なる空間や体験、人との関わりを通して一人ひとりに合った支援を行うことで、子どもの最前の利益の保障と健全な育成を図ります。
② 共生社会の実現に向けた後方支援
子どもの地域社会への参加や包容(インクルージョン)を進めるため、障害の有無に関係なくすべての地域の子どもたちと混ざり合う環境のなかで育つことを大切にします。例えば放課後児童クラブや児童館と連携する「後方支援」を行ったり、地域の学校や放課後児童クラブに通う障害のある子どもに対して保育所等訪問支援を実施したりするなど、地域の障害児支援の専門機関として地域の各機関とともに共生社会の実現を目指します。
③ 保護者支援
放課後等デイサービスには、保護者が障害のある子どもを育てることを社会的に支援するという役割もあります。
具体的には、「子育ての悩み等に対する相談を行うこと」「ペアレント・トレーニング等を活用しながら子どもの育ちを支える力をつけられるよう支援すること」「保護者の時間を保障するために、ケアを一時的に代行する支援を行うこと」があります。これらの支援によって保護者が子どもに向き合うゆとりと自信を取り戻すことが、子どもの発達にとても重要なことだと考えます。
放課後等デイサービスの詳しいサービス内容
厚生労働省の「放課後等デイサービスガイドライン」によって、放課後等デイサービスでは、子ども一人ひとりの個別支援計画に基づき、以下の活動を組み合わせて支援を行うことが求められています。
- ① 自立支援と日常生活充実のための活動
- ② 創作活動
- ③ 地域交流の機会の提供
- ④ 暇の提供
それぞれについて詳しく解説します。
① 自立支援と日常生活充実のための活動
子どもの発達に応じて必要となる日常生活動作や自立生活を支援するための活動を行います。
遊びなど、子どもが意欲的に関わることのできる活動を通して、成功体験を重ね自己肯定感を育むことを大切にします。将来の自立 や地域における生活を見据えた活動を行う場合には、子どもが通う地域の学校とも連携をとり、活動方針や役割分担を共有しながら進めます。
② 創作活動
創作活動をとおして表現する喜びを体験できることを大切にします。日頃からなるべく自然に触れる機会を設け、豊かな感性を培います
③ 地域交流の機会の提供
障害があることで子どもの社会生活や経験の範囲が制限されてしまわないように、積極的に地域との交流を図ります。そのために、他の事業や地域の住民が行うさまざまな体験や交流活動との連携も大切にします。
④ 余暇の提供
子どもが好きな遊びやリラックスできる時間を自分で選ぶことができるよう、さまざまなプログラムを用意してゆったりとした雰囲気のなかで活動できるように工夫します。
放課後等デイサービスの利用対象者
放課後等デイサービスを利用できるのは障害のある就学児童です。障害の種別は、身体障害・知的障害・精神障害(発達障害ふくむ)を問いません。
身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳などの障害者手帳を所持していることが条件になる場合もありますが、自治体によっては、手帳や診断書の有無にかかわらず、医師や児童相談所、市町村保健センターなどから療育の必要性が認められていれば利用できるケースもあります。医師が支援の必要性を認めることを示す意見書などを自治体に申請し、その内容や面談によって必要性を認められた場合は、通所受給者証が発行され、放課後等デイサービスの通所申し込みができます。
対象年齢は原則6歳から18歳ですが、18歳以降も引き続き放課後等デイサービスにおいて支援を受けなければ福祉(生活の安定や充足)を損なう可能性があると認められる場合には、満20歳まで利用することが可能なケースもあります。
放課後等デイサービスの利用料目安
放課後等デイサービスの利用料は、原則国と自治体がその9割を負担し、利用者は1割を負担します。
利用者が支払う金額を「利用者負担」と呼び、月ごとに放課後等デイサービスを利用した回数などによって計算されます。ただし、利用者負担は所得に応じて1ヶ月ごとの上限額が定められています。
- 非課税世帯(生活保護や低所得の場合):0円
- 市町村民税課税世帯(所得割28万円未満。収入が概ね920万円以下の世帯が対象):4,600円
- その他:37,200円
一方で、子どもの昼食代や特別なプログラムの際にかかる交通費・参加費などの費用は、別途実費で支払う必要があります。1回あたりの利用料は施設によって異なるため、詳しくは施設に問い合わせてみてください。
放課後等デイサービスを利用するための流れ
放課後等デイサービスを利用するまでには、どのような手順を踏む必要があるのでしょうか。一般的な流れについて解説します。
前提:放課後等デイサービスを利用するには「通所受給者証」が必要
放課後等デイサービスを利用するためには、自治体が発行する「通所受給者証」の取得が必要です。基本的に障害の診断書や障害者手帳がなくても「通所受給者証」の発行は可能ではあるものの、自治体によっては医師の意見書や療育相談の実施などが求められる場合があります。
(1)自治体窓口で利用相談を行う
市区町村の福祉担当窓口や障害児相談支援事業所などに相談します。どんなサービスを利用したいか、どのような支援を受けたいか、などの聞き取りが行われることもあります。窓口で地域の放課後等デイサービスを紹介してもらえる場合もあります。
(2)事業所の見学・体験を行う
実際に事業所に行き、見学します。施設によっては、体験利用ができる場合もあります。事業所に行った際に、利用プランなどについても相談に乗ってもらえます。意見書など、地域によって受給者証の申請に必要な書類がある場合は作成してもらいます。
利用したいサービスが決まったら、相談支援事業所で「障害児支援利用計画案」を作成してもらいます。市区町村にある相談支援事業所に行くか、地域によっては家庭訪問をして聞き取りを行う場合もあります。障害児支援利用計画案はセルフプランとして家族や支援者が作成することもできます。
(3)自治体窓口で支給申請を行う
支給申請の際、所得等を証明する書類や、持っていれば療育手帳や身体障害者手帳を提示します。手帳を取得していなくても、医療機関が障害があることを示す意見書などを提出することで申請ができます。
地域によって異なりますが、障害の確定診断がなくても医師の判断によって必要が認められれば申請できます。必要な書類は市区町村によって異なるため、持ち物は事前によく確認しておきましょう。
(4)給付決定・通所受給者証の交付
受給者証を発行するための利用要件を満たしているかどうかの判断や適切なサービスの量(日数)について、自治体の担当者によって審査されます。面接調査や訪問調査で聞き取りが行われることもあります。
支給が決定したら、受給者証が交付されます。受け取り方法は、郵送や直接受け取りに行く場合など、市区町村によって異なります。
交付を受けたら、受給者証の給付決定内容に基づいた障害児支援利用計画を作成します。相談支援事業所に依頼すると、利用を希望する事業所と連携をとりながら作成してくれます。
(5)放課後等デイサービス事業所との利用契約締結・利用開始
受給者証を持って放課後等デイサービス事業所に行き、利用契約の手続きをします。印鑑や健康保険証、持っている場合は療育手帳・障害者手帳などが必要なz場合があるので、持ち物は事前に確認しておきましょう。契約したら利用がスタートできます。
放課後等デイサービスを利用するメリット
放課後等デイサービスを利用することには、さまざまなメリットがあります。詳しく紹介します。
(1)他の子どもとコミュニケーションを取る機会になる
放課後等デイサービスでは、年齢の近い子どもたちと関わる機会があることが多いです。少人数の子どもたちを専門性のある大人が見守るので、必要なときには大人のサポートを受けながら、他の子どもたちとコミュニケーションをとることができます。
個々の特性に配慮した環境や大人のサポートがあるので、普段の生活で他の子どもたちとの関わりに苦手意識がある子どもたちも安心してコミュニケーションをとりやすいでしょう。
(2)学習サポートを受けられる
学習サポートを行っている事業所も多くあります。その子の特性に合わせたやり方で学習支援を行ったり、学校の宿題を手伝ったりとそのサポート内容は事業所によってさまざまです。
(3)自宅と学校以外の居場所がつくれる
放課後等デイサービスでは、それぞれの特性を理解して関わってくれる大人や、他の子どもたちとの関係性をつくることができます。自分を出して安心してすごせる居場所のひとつになっていく可能性があります。
(4)保護者もサポートを受けられる
子どもの成長や環境の変化に応じて、さまざまな課題や困りごとが生じる場合もあります。放課後等デイサービスでは、子どもたちを見ているスタッフが保護者の相談に乗ってくれたり、事業所によっては「ペアレントトレーニング」(子どもとの良い関わり方を学ぶ親向けのプログラム)を実施したりする場合もあります。
放課後等デイサービスを利用するデメリット
放課後等デイサービスを利用するデメリットはあるのでしょうか。詳しく紹介します。
(1)すべてのスタッフが資格を持っているわけではない
法令上、放課後等デイサービスで働くうえで必ず資格を求められるわけではないので、なかには療育や教育の資格を持たないスタッフもいます。
ただ、各事業所には必ず「児童発達支援管理責任者」と呼ばれる専門性のあるスタッフが配置されており、子どもたちの個別支援計画を作成します。すべてのスタッフは個別支援計画に基づいて個々の子どもたちの特性に配慮した支援を行うため、子どもたちは障害特性に応じた支援を受けることができます。
(2)子どもにとって負担になる場合がある
多くの子どもたちは、学校に行ったあとの放課後や学校が休みの日に放課後等デイサービスを利用します。学校生活で疲れている場合、放課後等デイサービスに通うことが負担になる可能性もあります。子どもの体力や気持ちに配慮しながら、家で休養をとることも大切です。
(3)事業所の詳細は、実際に見てみないとわからない
子どもたちの放課後の居場所になっている事業所や、運動や音楽のプログラムを中心にした事業所など、放課後等デイサービスの支援内容は事業所によってさまざまです。利用する前に実際に足を運び、事業所の子どもたちやスタッフの様子、行われている支援の内容などをたしかめると良いでしょう。
まとめ
放課後等デイサービスは、就学以上の障害のある子どもたちが利用できます。個々の障害特性に応じたサポートを受けながら、他の子どもたちと関わったり学習サポートを受けたりすることができます。特性を理解して関わってくれる大人との関係性があることで、安心できる居場所のひとつになるかもしれません。気になる方は各自治体の窓口に問い合わせのうえ、実際に事業所に足を運んで利用を検討してみてください。