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ADHD(注意欠如多動症)とは?子どもの特性と支援方法をわかりやすく解説

COLUMN

ADHDは、不注意、多動性、衝動性といった特性があります。子どもが特性によって日常生活や学校生活においてうまくいかないことがあると、親子共に悩んでしまうことも多いです。本コラムでは、ADHDの特性、具体的な行動の表れ方、年齢による違い、そして支援方法について詳しく解説します。正しい理解と支援によってその子の個性や才能を伸ばすことが大切です。

ADHDってどんな特徴?不注意・多動性・衝動性の傾向とよくある悩み

ADHD(注意欠如多動症)は発達障害の一つで、主な特性は「不注意」「多動性」「衝動性」です。また、ADHDは、脳の発達や機能に関わる障害であり、生まれつきの特性です。

以前は「注意欠陥多動性障害」と呼ばれていましたが、現在は「注意欠如多動症」という名称が使用されています。
子どもの成長に伴って多動性や衝動性という特徴は落ち着いてくることもありますが、一方で、不注意の特性は年齢を重ねても続くことが多いとされています。ADHDの有病率は、学齢期の子どもの約3~7%程度と考えられており、男の子に多く見られる傾向があります。

ADHDの特性がある子どもたちは、落ち着きがないなどと思われがちで、周囲から叱責されることが多く、自己肯定感が低下しやすい傾向があります。そのため、ADHDに対する適切な理解と支援によって、その子どもの持つ個性や才能を伸ばすことが大切です。

ADHDは育て方や本人の努力不足が原因ではない

ADHDを知る上で最も重要なのは、育て方や本人の努力不足が原因ではないということです。

ADHDは、脳の発達における機能的な特性であり、親の育て方や本人の努力とは全く無関係に生じる先天的な状態です。子育ての失敗でも、愛情不足でもなく、もちろん本人の怠慢でもありません。
ADHDのある子どもが示す不注意・多動性・衝動性は、本人が意図的に起こしているものではなく、むしろ本人自身も困惑している状況であることを理解する必要があります。

また、ADHDの特性は個人差が大きく、一人ひとり異なる表れ方をします。個々の特性や環境に合わせて様々な人の手を借りて、一人ひとりに合った教育を行うことが重要です。
そのため、このコラムでは、特性の特徴や年齢による変化などに触れていきます。

子どものADHD特性が表れる場面とは?不注意・多動性・衝動性を具体例で紹介

ADHDの主な特性は「不注意」「多動性」「衝動性」の3つです。これらの特性がどのように表れるか、具体的に見ていきましょう。それぞれの特徴をあげていきます。
お子さま一人ひとりによって、どの特徴が色濃く出るかは異なります。

① 不注意

注意を集中させることや持続させることが難しい

  • 細かいことに注意が向かず、ケアレスミスをしやすい
  • 課題や遊びに集中し続けることが難しい
  • 話しかけられても聞いていないように見える
  • 指示に従えず、課題や活動を最後まで遂行できない
  • 物事を順序立てて行うことが苦手
  • 時間や約束を忘れがち
  • 忘れ物や失くし物が多い
  • 日常的な活動を忘れてしまう(宿題の提出や歯磨きなど)
  • 外からの刺激で簡単に気が散ってしまう

② 多動性

年齢や状況に不相応な過度の運動

  • じっとしていられず、そわそわと体を動かす
  • 座っているべき場面で席を離れてしまう
  • 走り回ったり高いところによじ登ったりする
  • 静かに遊ぶことが難しい
  • 絶えず何かをしていないと気が済まない
  • しゃべりすぎる

③ 衝動性

  • 考える前に行動してしまう
  • 質問が終わる前に答えてしまう
  • 順番を待つことが難しい
  • 他人の会話や活動に割り込んでしまう
  • 危険を顧みず衝動的に行動する
  • 思ったことをすぐに口に出してしまう

補足:どの特性が強く表れるかは、人によって異なる

3つの特性は、年齢や状況に応じて様々な形で表れます。例えば、幼児期には多動性が目立つ場合でも、成長とともに落ち着いてくることがあります。一方で、不注意の特性は年齢を重ねても続くことが多いとされています。
また、これらの特性の表れ方には個人差があり、全ての特性が同じように現れるわけではありません。例えば、不注意が主な特性として現れる「不注意優勢型」、多動性・衝動性が主な特性として現れる「多動性・衝動性優勢型」、両方の特性が同程度に現れる「混合型」などがあります。
ADHDの特性を持つ子どもたちは、これらの特性によって日常生活や学校生活で様々な困難を経験することがあります。しかし、適切な理解と支援があれば、その子どもの持つ個性や才能を伸ばすことができます。

年齢別にADHDの特性がどのように表れるかを詳しく見ていきましょう。

年齢によるADHDの変化|幼児期から高校生までの特徴と接し方の工夫

ADHDの特性は年齢が上がるにつれて、特性は変化する傾向があります。特に多動性や衝動性は低年齢ほどよく見られる傾向にあります。そのため、ここでは、保育園・幼稚園、小学校、中学校・高校の各年代でよく見られる特性について触れていきます。

保育園・幼稚園(2〜5歳)でよく見られる特性

不注意に関する特性

  • すぐに気が散りやすい
  • 指示を聞き逃したり、聞いていないように見えてしまう
  • おもちゃや持ち物をすぐになくしてしまう
  • 遊びや課題を途中で止めてしまう

多動性・衝動性に関する特性

  • じっとしていられない
  • 常に動き回っている
  • 静かに遊べない
  • 順番を待つことが難しい
  • 急に走り出したり、騒いだりする

小学校(6歳〜12歳)でよく見られる特性

学習面での特性

  • 授業中に集中できない
  • 細かいミスが多い
  • 宿題や学校の課題を忘れる
  • 学習や細かい作業を避ける
  • 物事を順序立てて整理することが苦手

行動面での特性

  • 授業中に席を離れてしまう
  • 質問が終わる前に答えてしまう
  • 他人の会話や活動を遮る
  • 友達との関係構築が難しい

中学校・高校生(13歳〜18歳)でよく見られる特性

学業・社会生活での特性

  • 時間管理が苦手
  • 計画的に物事を進めることが難しい
  • 感情のコントロールが難しい
  • 長期的な目標を立てることが苦手
  • 衝動的な行動や決断

心理的な特性

  • 自尊心が低くなりやすい
  • 同年齢と比較してしまい勉強に苦手意識を覚えやすい
  • 自身の感情を調整できない時がある

ADHDの診断と治療法|知っておきたいポイントと進め方

ここまで、ADHDの特徴についてお話ししましたが、自己判断するのではなく、医療機関で診断することが重要です。
そこでこの章では、ADHDの診断基準と治療法について詳しく解説します。診断基準では、症状の具体的な特徴や評価のポイントを取り上げ、治療法では、薬物療法や心理社会的支援、環境調整など、子どもの成長を支えるための多角的なアプローチを紹介していきます。専門家や周囲の人たちの力を借りて、子どもの特性を理解し、自信をもって成長できるようサポートしていくことが大切です。

ADHD(注意欠如多動症)の診断基準とは

ADHDの診断は、児童精神科医や小児科医などの専門医により、主に臨床的な観察と評価に基づいて行われます。一般的に使用される診断基準は、アメリカ精神医学会の「精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)」に基づいています。

DSM-5によるADHDの診断基準の主なポイントは以下の通りです

  1. 不注意または多動性-衝動性の症状が6つ以上(17歳以上の場合は5つ以上)ある
  2. 症状が6ヶ月以上持続している
  3. 症状が12歳未満から始まっている
  4. 症状が複数の場面(例:家庭と学校)で見られる
  5. 症状が社会生活や学業に支障をきたしている
  6. 他の精神疾患ではよりよく説明できない

ADHD(注意欠如多動症)の4つの治療法

ADHDの治療法は、個々の特性や環境に合わせて総合的に行われます。主な治療法は4つあります。

1.薬物療法

専門医の慎重な判断のもとでメチルフェニデート、アトモキセチンなどの薬剤が使用されることがあります。これらの薬は脳内の神経伝達物質のバランスを整え、症状の改善を図ります。

2.心理社会的治療

ペアレントトレーニングを行い、「人のせいにする」や「片づけない」などのネガティブな行動を減らし、積極的にポジティブ行動ができるように促していきます。
保護者がADHDの特性を理解し、子どもとの関わり方や褒め方、叱り方などを学ぶことで、親子共にストレスを軽減し、良い親子関係を築いていくことができます。
またペアレントトレーニングの一環で、同じ悩みを持つ保護者や理解のある支援者との交流を深めることで、悩みを共有でき、保護者のメンタルケアにもつながります。

3.環境調整

家庭や学校での環境を整え、ADHDの特性に合わせた支援を行います。例えば、座席の配置を工夫したり、課題を細かく分割して本人ができるように調整したりします。

4.教育的支援

学校やサポート機関と連携し、ADHDの特性に合わせた教育的配慮を行います。例えば、教材の工夫をしたり、本人ができる分量に宿題を調整したり、時には個別指導の実施なども行います。

ADHDには長期的な取り組みが必要であり、子どもの成長に合わせて柔軟に対応していくことが重要です。また、家族や学校、医療機関などの連携が不可欠です。
治療の目的は、ADHDの症状を緩和し、子どもが自分の特性を理解し、自己肯定感を持ちながら成長していけるよう支援することが大切です。

ADHDの子どもとどう向き合う?特性を活かした接し方と工夫のヒント

ADHDの子どもにとって、得意なことに目を向けて具体的に褒めることで自己肯定感を育み、環境を整えることで特性に合った取り組みやすい状況を作ることがとても重要です。また、具体的で簡潔な指示やごほうび制度を活用し、子どもの理解やモチベーションをサポートすることが効果的です。

①「できないこと・苦手なこと」より、「できること・得意なこと」に目をむける

ADHDの子どもは、「できないこと」に焦点を当てられてしまうことが多く、自信を失いがちです。そのため、子どもの強みや得意なことに積極的に目を向けることが重要です。できたことに対しては具体的に褒め、小さな成功体験を重ねることで自己肯定感を育むことができます。例えば、「片付けが苦手」と指摘するのではなく、「おもちゃを指定されたゾーンに片付けられたね!」と肯定的な言葉がけをすることで、子どもの自信につながります。

②「できないこと・苦手なこと」がある時は、環境調整を考える

ADHDの子どもの困難は、本人の努力不足ではなく、特性です。そのため、環境を調整することで、子どもが取り組みやすい状況を作ることが大切です。例えば、宿題をする際は、視覚的な刺激を減らし、集中できる環境を整えたり、課題を小分けにして取り組みやすくしたりすることが効果的です。

③ 具体的な指示や視覚的な伝え方で、伝えたい内容を分かりやすくする

ADHDの子どもは、抽象的な指示や長い説明を理解することが苦手です。そのため、具体的かつ簡潔な指示を心がけ、視覚的な手がかり(絵や写真、リストなど)を活用することが重要です。例えば、「部屋を片付けて」ではなく、「おもちゃは赤い箱に、本は青い箱に入れてね」のように、具体的に伝えることで理解しやすくなります。

④ 守りやすいルール&ごほうび制でモチベーションを維持する

ADHDの子どもは、明確で守りやすいルールと、達成感を得られる仕組みが効果的です。例えば、宿題後にゲームができるというルールや、シールなどの目に見えるご褒美システムを導入することで、モチベーションを維持できます。また、小さな目標を設定し、達成できたら即座に褒めることで、前向きな行動を促すことができます。

家庭や学校でできるADHDのサポート|子どもの力を伸ばす環境づくり

ADHDを持つ子どもたちの支援には、家庭や学校での取り組みが非常に重要です。子どもの特性を理解し、環境を整えながら適切にサポートすることで、成長を支えることができます。しかし、家庭や学校での支援には限界があり、特に専門的な知識や継続的なフォローが必要な場面では、外部のサポートを利用することも有効です。
学校や家庭では、子どもの得意なことや成功体験を見つけ、具体的に褒めることで自己肯定感を育むことが推奨されます。また、環境調整や適切なルール設定などを通じて、子どもが困難を乗り越えられるようサポートすることも可能です。しかし、日常生活の中で、どうしても目が届かない部分やうまくいかない場面も生じます。そうした場合に、学校外の支援サービスを活用することは、子どもとその家族にとって大きな助けとなります。
弊社では、子どもの強みや個性に合わせたサポートを行うことを重視しています。例えば、得意なことを見つけて積極的に褒め、成功体験を重ねることで社会性を養うトレーニングを提供しています。支援員は、子どもが適切な行動を取った際に、喜びや安心といった心地よい感情を共有し、その繰り返しによって子どもの自己成長を促しています。
また、感覚統合を促す粗大運動や学習支援を通じて、子どもが楽しみながら取り組めるプログラムを提供することも重要です。運動機能を高める活動や、適切な難易度の学習を通じて、子どもの発達を支援する取り組みを行っています。さらに、周囲の大人が笑顔で接することで、子どもが安心して活動に集中できる環境を整えることを目指しています。
こうした支援は、家庭や学校のサポートと併用することで、子どもたちが自分の特性を理解し、自信を持って成長していくための力になります。困難を抱える家庭にとっても、外部の支援は頼れる存在であり、子どもの可能性を広げるための重要な選択肢です。ADHDの子どもと向き合いながら、一緒に成長を支えるサポートの輪を広げていくことが大切です。

まとめ|ADHDの子どもが自分らしく成長できるために

ADHDの子どもたちは、その特性により日常生活や学校生活で困難を経験しやすい一方で、大きな成長と可能性を秘めています。
専門的なサポートを通じて、子どもの得意なことや成功体験を見つけ、自己肯定感を育むことが可能です。また、子どもが楽しみながら取り組めるプログラムや環境を整えることで、成長を後押しすることができます。周囲の大人が笑顔で接しながら支えることも、子どもの安心感や自信に繋がります。
子どもの特性を理解し、家庭や学校、医療機関、専門機関のサポートも取り入れることで、ADHDの子どもたちが自分らしさを活かしながら成長できる環境を整えることができます。AIAI VISITでは、集団生活中のお子様を見ながら周囲との関わり方やお子様の成長をサポートしていきますので、気になることはお気軽にお問合せください。

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