発達障害とは?種類や子どもが感じる困りごと、支援内容について解説!
COLUMN
発達障害とは、生まれつき脳機能の働きに偏りがあることで幼少期から行動面や情緒面において特性があり、環境や周囲の人間関係において困りごとを感じる状態のことをいいます。この記事では、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、LD(学習障害)などの障害別の特徴や、発達障害のある子どもの困りごとについて解説するとともに、診断基準や診断方法、支援やサポートを受けられる相談先などを紹介します。
発達障害とは?
発達障害とは、生まれつき脳機能の働きに偏りがあることで幼少期から行動面や情緒面において特性があり、環境や周囲の人間関係において困りごとを感じる状態のことをいいます。
「発達障害者支援法(2016年改正)」では「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」と定義されていますが、障害の種類を明確にわけて診断することは難しいといわれています。
発達障害の種類とよく見られる困りごと
発達障害には、主に3つの種類があります。いくつかを併せもつケースも少なくありません。それぞれのタイプごとの特性と、よく見られる困りごとを解説します。
ASD(自閉スペクトラム症)
ことばの遅れや知的障害のある自閉症から、知的障害はないアスペルガー症候群まで、自閉的特徴をもつ疾患の総称です。診断時期や基準によっては「アスペルガー症候群」「高機能自閉症」「広汎性発達障害」などということもあります。
以下のような特性が見られます。
- 対人関係や社会性の障害:人の表情や気持ちを読み取ることや会話のキャッチボールが苦手、言葉の裏にある意味を汲み取ることが難しい、など
- こだわりや興味の偏り:同じ遊びや食べ物を好む、予定の変更や活動に切り替えに対応できない、など。
特定の音や光、匂いや触感などに対して偏った反応を示す「感覚過敏」「感覚鈍麻」があることもあります。
ASD(自閉スペクトラム症)の子どもが感じやすい困りごと
人とのコミュニケーションが苦手でトラブルになったり、こだわりの強さから集団生活でつまずくことがあります。また、言動が周りの人から理解されづらく叱責や注意されることが多く、自信をなくしたり不安を抱えやすかったりする場合もあります。
ADHD(注意欠如多動症)
ADHDには、3つの特性があります。
- 不注意:注意散漫でケアレスミスや忘れ物が多い、など
- 多動性:落ち着きがなく集中力が続かない、じっとしていることや待つことができない、など
- 衝動性:衝動的な言動をコントロールすることが難しく、思いつきで動いてしまう、など
ADHDの子どものなかでも、特性の現れ方によって、多動・衝動性の傾向が強いタイプ、不注意の傾向が強いタイプ、多動・衝動性と不注意が混在しているタイプにわかれます。
ADHD(注意欠如多動症)の子どもが感じやすい困りごと
ケアレスミスや忘れ物が多い、授業を集中して受けられない、順番を待てないことやすぐにカッとなることで友達とのトラブルが多いなど、日常生活においてさまざまな困りごとが起きやすくなります。大人から叱責されることや友達から敬遠されることにつながり、自分に自信がもてなくなることもあります。
LD(学習障害)
知的障害はなく、学習における面のみにおいて、困難さがみられます。具体的には以下のような困りごとがあります。
- 読字障害(ディスクレシア):文字を読むこと、文章を読んで理解することが苦手、など
- 書字障害(ディスグラフィア)文字を書くことが苦手、など
- 算数障害(ディスカリキュリア):数の理解や計算が苦手、など
読めるのに書けないなど、一部だけに困りごとが表れることもあります。
LD(学習障害)の子どもが感じやすい困りごと
授業についていけなくなる、宿題をこなせないなど、学校生活において困りごとを感じやすくなります。また、特定の教科や課題が極端に苦手であることから、苦手なことについて周囲から「怠けているのではないか」と誤解を受けてしまうことがあります。
発達障害のグレーゾーン
明確な定義はありませんが、定型発達と発達障害の間の境界領域を指すことばとして「グレーゾーン」といわれます。診断基準を全て満たすわけではないものの発達障害の特性があり、日常生活を送る上で困難がある状態です。
グレーゾーンの子どもが感じやすい困りごと
診断がつく場合と比べると、グレーゾーンの子どもは特性による困難さが周りに認識されづらく、必要な配慮や支援を受けられなかったり、対応が遅くなったりすることがあります。そのため本人は日常生活における困難を長く抱えることになり、特性がさらに強くなったり、不安やストレスによるうつ状態など二次的な問題につながったりすることもあります。
発達障害の原因とは?
発達障害は、生まれつき脳機能に偏りがあることでその特性が現れるとされています。親のしつけや本人の努力不足によって発達障害が引き起こされるわけではありません。
なぜ脳機能に偏りが起きるのか、明確な因果関係は明らかになっていません。一部には遺伝的な要因が絡んでいるとされていますが、影響があったとしても複合的に要因が絡んでおり、他にもさまざまな環境要因が影響しあった結果として脳機能の偏りが生じると推測されています。
発達障害に早く気づくためには?発達障害のサイン
発達障害にはなるべく早く気づいて適切な支援や配慮を受けることが大切です。早期に気付き支援を受けることで、日常生活や人間関係における困りごとを軽減することができます。気付きが遅れると、子どもはつまずきを繰り返し、自信を失うことで二次的な問題を引き起こすリスクにつながります。
ASD(自閉スペクトラム症)のサイン
ASD(自閉スペクトラム症)の症状は程度や年齢などによって非常に多様です。1~2歳の頃から「目が合わない」「他の子に関心がない」「指さしをしない」「言葉が遅い」などのサインが見られるようになります。成長に伴って「一人遊びが多い」「きまった遊びしかしない」「表情が乏しい」「かんしゃくが強い」「会話のキャッチボールが成立しない」などのサインも出てきます。
学齢期以降になると「友だちができにくい」「友達に対して一方的に話し続けてしまう」など、人間関係における困りごとも見えやすくなります。
感覚の鈍さや敏感さがある場合には「大きな音が怖い」「手が汚れる遊びをいやがる」「プールやお風呂に入ることが苦手」「人がたくさんいるところを嫌う」などの傾向も見られます。
ADHD(注意欠如多動症)のサイン
幼少期から「落ち着きがない」「かんしゃくを起こしやすい」「非常に活発である」といった様子が見られることが多いですが、幼い子どもにみられる特徴と見分けにくいところがあります。
そのため、就学後に「授業に集中できない」「忘れ物が多い」「時間の管理が苦手」「注意散漫でミスが多い」などの特徴からADHD(注意欠如多動症)を疑われることが多いです。
LD(学習障害)のサイン
就学後、国語や算数の授業において「読むのが遅い」「読んでも内容が理解できない」「文字を正しく書くことができない」「数の概念が理解できなかったり、計算が遅い」などのサインで気づかれることが多いです。就学以前から「言葉の遅れ」「数えることの困難」「手先が不器用」などの傾向が見られることもあります。
発達障害の支援・サポート方法
発達障害の原因は生まれつきの脳機能の偏りにあると考えられており、脳機能の偏りそのものを治すことはできません。ただし、適切な配慮や支援を行うことで、日常生活に必要なスキルを身につけたり、困りごとを軽減したりすることができます。
家庭、医療機関、園や学校、福祉施設などが連携しながら、その子に必要な行動療法や環境設定を行うと良いでしょう。
ASD(自閉スペクトラム症)への支援・サポート
ASD(自閉スペクトラム症)の子どもには特有の強いこだわりがあることがあります。周囲の大人はその特性を無理に変えようとせず、受け入れることも必要です。
特性を受け入れたうえで適切な支援をおこなうことで、子どもの困りごとを減らしていけるでしょう。例えば、場面ごとに好ましい行動を教える行動療法や、対人関係を築くうえで必要なソーシャルスキルを身に着けるトレーニングなどの支援があります。
また、日常生活において、その子の特性に応じた配慮や環境設定をすることも大切です。例えば急な予定変更の苦手な子には予定の見通しをわかりやすく伝える工夫をしたり、ざわざわした音が苦手な子に音をさえぎるヘッドホンを用意したりすることができます。
ADHD(注意欠如多動症)への支援・サポート
ADHD(注意欠如多動症)の子どもは、その特性により周囲から叱責され自信をなくしていることが少なくありません。できないことを責めるのではなく、できたことを褒める関わりが大切です。
そのために、困りごとが軽減するような環境設定や声かけを工夫することが効果的です。例えば気が散りやすい子どもが集中して学習に取り組めるよう、目に入る場所から気になるものを取り除くこと、他の音が入ってきづらいスペースを確保すること、衝動的な行動が出るときには「走らないで!」といった否定的な声かけを「ゆっくり歩いていこう」と肯定的な言い方に言い換えることなどがあります。
必要に応じて、薬による行動改善を行うこともあります。
LD(学習障害)への支援・サポート
その子の困難さをサポートすることで、できることを増やしていくという視点が必要です。
例えば文字を書くことに困難さがある子はタブレットの文字入力を使ったり、読むことに困難さがある子には行間を広くしたり文字を大きくしたりした文章を用意したり、といったことがあります。漢字を書くことが苦手な子も、文字のパーツをパズルのように組み合わせたり、書き方を口頭で説明したりすることで、書ける字が増えるケースもあります。
子どもそれぞれの学習への困難さがどこにあるのかをしっかり見極め、一人ひとりに合った学習方法やサポートを行うことが大切です。
※参考※
発達障害かもと思ったら?相談・支援先
子どもに発達障害の傾向があるかもしれないと気づいたとき、相談できる医療機関や支援センターがあります。一人で抱え込まず、専門機関の相談窓口を利用するのがおすすめです。
子どもの発達障害は年齢や発達段階によって診断が難しい場合もありますが、大切なのは診断がつくかどうかではなく、子どもの困りごとをいかに軽減できるか、そのためにどのようなサポートができるのかを知ることです。
医療機関(小児科・児童精神科・小児神経科・発達外来など)
発達障害の診断や治療を行うのは、主に小児神経科か児童精神科です。「発達外来」など特別な診療科を設けている医療機関もあります。
発達障害者支援センター
年齢にかかわらず発達障害のある人向けにさまざまなサポートを提供している支援機関です。必要な助言や、医療機関・支援機関の紹介を行います。
児童発達支援センター/放課後等デイサービス
障害のある子どもが通い、日常生活で必要なスキルを身に着ける訓練を行う施設です。利用するには、お住まいの市区町村への問い合わせが必要です。
精神保健福祉センター
都道府県・政令指定都市に設置されている相談窓口です。心の問題や病気、思春期・青年期の精神医学的な困りごとなどの相談にのったり、医療機関・支援機関の紹介を行います。
市区町村保健センター
市町村が設置・運営している、地域の保健や衛生に関する業務を担当している行政機関です。子どもの発達についての相談に対しての助言や、医療機関や他の支援機関の紹介も行っています。
お住まいの市町村に問い合わせてみてください。
児童相談所
児童相談所は18歳未満の子どもに関する相談を受けている機関です。児童福祉司・児童心理司・医師・保健師などの専門スタッフがいて、子ども本人や保護者、地域の方など幅広い人からの相談を受け付けています。
子どもの発達が気になる場合の相談に対しても、助言や医療機関や支援機関の紹介などを行っています。
子育て支援センター
市町村ごとに地域の公共施設などを使ってひらかれており、主に乳幼児の子どもと子どもを持つ親が交流を深める場です。子育てについての不安や悩みも相談することができます。
地域によっては子ども家庭センターや子ども家庭支援センターなどの名称で同じ機能の場をひらいている場合があるので、まずは市町村に問い合わせてみてください。
発達障害の診断の流れ
発達障害の診断が下りるまでの流れを解説します。
発達障害の診断が受けられる医療機関の探し方
子どもの場合は専門医のいる小児科や小児発達神経科、児童精神科で受診することができます。また、思春期以降の場合は精神科での受診も可能です。
いきなり専門の診療科を受診することに抵抗がある場合や近くの病院に専門の診療科がない場合は、かかりつけの小児科や地域の発達障害者支援センターで相談し、専門の医療機関を紹介してもらうとよいでしょう。
発達障害の診断基準
発達障害の診断には、アメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)や世界保健機関(WHO)の『ICD-10[1] [2] 』(『国際疾病分類』第10版)など、国際的な診断基準の定義が用いられます。
発達障害の検査内容
医師が子どもに対する問診や行動観察を行い、次に、問診で得た情報をもとに、心理検査や発達検査などを行います。今の子どもの状態だけではなく、幼少期の様子や生育歴も診断の参考にするので、育児日記や健診結果などがあれば持参すると良いでしょう。
診断に際しては、その症状が一定期間以上持続することが条件となっているため、何度か検査や経過を見て診断されることもあります。
発達障害はどんな支援制度が利用できる?
発達障害の子どもが利用できる支援制度を紹介します。
児童発達支援
0歳から6歳までの障害のある子どもが通い、日常生活で必要なスキルを身に着ける訓練を行う施設です。利用するには、お住まいの市区町村への問い合わせが必要です。
放課後等デイサービス
6歳から18歳までの障害のある子どもが通い、日常生活で必要なスキルや対人関係に必要なソーシャルスキルなどを身に着ける訓練を行う施設です。利用するには、お住まいの市区町村への問い合わせが必要です。
障害児入所施設
障害のある0歳から18歳の子どもが入所することができ、日常生活に必要な生活習慣などを身に着け、自立を目指す施設です。福祉サービスを行う「福祉型」と、福祉サービスに併せて治療を行う「医療型」があります。
保育所等訪問支援
保育所等訪問支援は児童福祉法に基づく支援サービスのひとつで、障害のある子どもが集団生活を送るために必要な支援を行います。例えば保育園や幼稚園、学校や放課後児童クラブ(学童)など、さまざまな集団生活の場に支援員が訪問し、必要な支援を行います。
関連記事:「保育所等訪問支援 とは」
まとめ
子どもに発達障害の傾向があると気づいたら、なるべく早く適切な支援や配慮を受けることが大切です。早期に気付き支援を受けることで、子どもの日常生活や人間関係における困りごとを軽減することができます。
発達障害は、生まれつき脳の機能に偏りがあることで特性が生じるとされています。保護者の方が一人で抱え込むのではなく、専門家のいる機関に相談したり支援制度を利用したりすることで、子どもに必要なサポートを受けられるよう検討してみてください。