安心して臨む1歳半(乳幼児)健診:赤ちゃんの健康と発達を確認するポイント
COLUMN

子育てをしていると、我が子の成長や発達に対してふと不安を感じることがあるのは自然なことです。1歳半健診は、そうした不安を専門家と一緒に確認し、子どもの健やかな成長を支えるための大切な機会です。この健診は、単なる身体測定にとどまらず、子どもの心と体の発達を総合的に確認し、必要に応じて適切な支援につなげる役割を果たしています。
1歳半健診とは
1歳半健診の概要
1歳半健診は、正式には「1歳6か月児健康診査」と呼ばれ、1歳6か月から2歳未満の子どもを対象に実施される健康診査です。この健診は、母子保健法に基づく法定健診であり、基本的に無料で受けられるのが特徴です。たくさんの保護者がこの制度を利用しており、2020年度の受診率は95.2%にも達しました。この数字からも、多くの家庭が子どもの成長を確認し、安心を得るために健診を活用していることがわかります。
健診と検診の違い
「健診」と「検診」は似た言葉ですが、その目的には違いがあります。「健診」は子どもの健康状態や発達を包括的に確認することを目的とし、問題の早期発見だけでなく、育児相談や成長を支えるためのアドバイスも含まれます。一方で、「検診」は特定の疾患や異常を見つけることに重点が置かれています。1歳半健診は前者に該当し、子どもの心身の成長を幅広くサポートするものとなっています。
1歳半健診の特徴
1歳半健診は、それ以前の乳児健診とは異なり、子どもの心の発達にも焦点を当てて、発達状況を確認します。1歳半より前の健診では、主に身体的な成長や栄養状態の確認が中心でしたが、1歳半健診では子どもの知的発達や社会性、行動の発達を重視して診察が行われます。
この時期の発達の特徴
1歳半頃は、子どもの脳の発達が大きく変化する重要な時期です。この時期には、脳の働きが脳幹から大脳へと移行し、知的発達や社会性の形成が始まります。具体的には、言葉の理解や発語、周囲との関わり方、感情表現などが発達の大きなポイントです。1歳半健診では、これらの観点から子どもの成長を丁寧に確認し、必要に応じて専門的なサポートを検討します。
法的背景
1歳半健診は、母子保健法に基づき全国の自治体で実施が義務付けられている重要な取り組みとなっています。法律によりその重要性が明確に示されているため、健診を活用することは保護者にとっても大切な義務とも言えます。
法的根拠
1歳半健診は、母子保健法により市区町村での実施が義務付けられています。具体的には、満1歳6か月を超え満2歳に達しない子どもが対象となります。この健診は無料で受けられるため、経済的な負担なく子どもの成長を確認できます。
健診の目的
母子保健法に基づくこの健診の主な目的は以下のとおりです
- 子どもの体の健康と発達の確認
- 子どもの心の健康と発達の確認
- 疾患の有無の確認
- 子どもとその保護者へのサポート
特に、この時期は発達障害や先天性疾患を早期に発見できる重要な機会でもあります。早期発見することは、その後の成長のサポートや本人が過ごしやすい環境を整備する上で重要な一歩となります。
健診の具体的な内容
1歳半健診では、子どもの身体、運動機能、精神面の発達、さらには歯の状態まで幅広く確認します。この健診を通じて、成長過程での問題を早期に発見し、適切なサポートを提供することが可能です。以下では、各検査項目とその目的について詳しく説明します。
身体測定(身長・体重・頭囲・胸囲)
健診では、まず身長と体重を測定し、成長曲線に照らし合わせて子どもの発育状態を確認します。あわせて頭囲や胸囲も測ることで、脳や内臓が適切に成長しているか客観的に把握できます。特に頭囲は脳の発達と深く関わりがあるため、異常な程度の大きさや小ささが見られた場合、必要に応じて精密検査を勧められることがあります。
- 身長:成長曲線に照らし合わせて評価
- 体重:栄養状態と全体的な発育を確認
- 頭囲:脳の成長と発達を評価
- 胸囲:身体の全体的な発育状況を確認
運動機能や視聴覚のチェック
1歳半ごろになると、多くの子どもが自力歩行を始めます。医師や保健師は、歩くときのバランスや足の形状、転び方などから運動機能を確認します。また、視覚や聴覚の反応も簡易検査を行い、大きな視力・聴力の異常がないかを判断します。たとえば、呼びかけに振り向くか、物を目で追えるかなどの行動を通じて、五感(特に視覚・聴覚)の発達状態を見極めます。
- 歩行能力:安定した歩行ができるか
- 手先の器用さ:積み木を積むなどの微細運動の確認
- 視覚機能:目の動きや追視能力
- 聴覚機能:音への反応や理解度
精神発達の確認
1歳半健診の特徴の一つは、心理面に関する評価です。保健師や医師は、言葉の理解や発語の有無、指さしや模倣行動などのコミュニケーション能力を観察し、社会性や言語面の発達をチェックします。たとえば、「ワンワン」「ブーブー」など簡単な単語を話すか、保護者のちょっとした指示を理解して動けるかなどが主な確認項目です。また、集中力や落ち着きのなさが極端でないかといった行動面も含めて総合的に見ます。
- 言語発達:意味のある言葉を話せるか
- コミュニケーション能力:アイコンタクトができるか、指示を理解できるか、簡単な動作を模倣できるか
- 社会性の発達:他者との関わり方
先天性疾患や発達障害の早期発見
健診では、身体面の診察だけでなく、先天性疾患や自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)といった発達障害の可能性を探ることも重要な目的となっています。実際、1歳半ごろには言語や社会性の遅れ、つま先歩きの頻度、視線が合いにくいなどのサインから、早めに何らかの支援が必要かどうかを判断する材料を得られます。もし疑いがある場合は、後日専門医療機関へ紹介されたり、より綿密な経過観察を行うなどの措置に進む可能性があります。
早期発見される可能性のあるポイント
- 自閉スペクトラム症(ASD)の初期サイン
- 注意欠如多動症(ADHD)の可能性
- 聴覚や視覚の異常
- 運動発達の遅れ
- その他の先天性疾患の兆候
歯科健診(歯の生え具合、虫歯の有無)
歯科健診では、歯の本数や生え具合、かみ合わせ、虫歯の有無などを調べます。この時期の乳歯は、その後の永久歯の土台となるため、早めに口腔環境を整えることが大切です。特に、食べ物の好みや食べ方の偏りは虫歯リスクを高めるため、歯科医や歯科衛生士から歯磨きの指導や食事のアドバイスが提供されます。自治体によっては一般診査と歯科健診が別日程になることもあり、歯科健診を委託医療機関で受ける場合は事前に日時を確認しておきましょう。
まだ小さいので、歯磨きを嫌がったり、じっとしなかったりという悩みを抱える保護者の方はこの時に相談されることがおすすめです。「歯ブラシを口に入れようとすると泣き出してしまいます」など細かい状況を伝えることで、状況にあった上手な歯磨き方法を教えてくれます。
- 歯の生え具合:乳歯の本数と状態
- 虫歯の有無
- 歯並びと口腔内の異常の確認
- 歯磨き指導
子どもと保護者にとっての意義
身体測定や運動・言語機能の確認、先天性疾患や発達障害のスクリーニング、歯科健診など、多角的に子どもの健康や発達をチェックする1歳半健診は、早期の支援に繋がる機会になります。保護者の側から見れば、「うちの子の発達がゆっくりかもしれない」「最近ことばの遅れが気になる」などの不安を相談しやすい場でもあるでしょう。もし何らかの気になる兆候があれば、この機会に専門家のアドバイスや紹介を仰ぎ、継続的にサポートを受けることが大切です。
受診方法の違い:集団健診と個別(委託医療機関)
1歳半健診は市区町村の保健所や保健センターで一斉に行う集団健診が一般的ですが、地域によっては病院やクリニックに委託し、個別健診を実施する場合もあります。集団健診と個別健診のいずれを選択するかによって、受診日や場所の予約の仕方が異なるので、自治体からの通知をよく確認しておく必要があります。
さらに、保健センターでの集団健診に歯科医が常駐していない場合などは、別日に歯科診査を受ける形態をとっていることもあります。スケジュールには十分に注意しましょう。
健診当日の準備と持ち物
1歳半健診に向けての準備は、子どもと保護者が安心して健診を受けるために重要です。以下の持ち物を事前に確認し、準備しておきましょう。

必ず持参するもの
1歳半健診で必ず持参すべき持ち物は以下の通りです
- 母子健康手帳:子どもの成長記録が記載されている大切な書類
- 健康保険証:医療機関での受診に必要
- 乳幼児医療費受給者証:医療費助成に関する重要な証明書
- 記入済みの問診票:事前に必要事項を記入しておくことが重要
- 歯ブラシ:歯科健診の際に使用
- オムツ替えセット:汚れた場合に備えて準備
あると便利なもの
健診の待ち時間や突発的な状況に対応するため、以下のものを持参すると安心です
- お気に入りのおもちゃや絵本:長い待ち時間に子どもを落ち着かせるのに役立ちます
- 飲み物や軽食:子どもの機嫌を保つために有効
- 羽織りもの:室内の温度調節や急な気温変化に対応
健診当日の流れ
1歳半健診は、子どもの成長と発達を確認する重要な機会です。以下が一般的な健診の流れとなります。
市町村からの通知受領
健診の約1か月前に、市区町村から健診の日時や場所、必要な持ち物が記載された通知が届きます。通知には問診票や受診票が同封されていることが多いため、事前に記入しておくことが重要です。
受付
指定された会場で、母子健康手帳、問診票、健診のお知らせを提示して受付を済ませます。多くの自治体では、混雑緩和のため時間指定制を採用しています。
委託機関で受診する場合は早めの予約を心がけましょう。日時が近くなってから予約しようとすると、近隣の委託機関では、期間内に予約が取れなくて、何か所も電話で確認し、少し遠いところに行かなくてはいけなくなってしまう可能性もあります。
問診
保健師や医師が、お子さまの日常生活や発達状況について保護者に質問します。普段の様子や気になることを詳しく伝えることで、より正確な健康状態の把握につながります。
身体測定
身長、体重、頭囲などを測定します。子どもが泣いたり動いたりして測定が難しい場合は、保護者と一緒に測定することもあります。子どもが安心できるように声掛けなどをしてあげると良いかもしれません。
診察
- 内科診察:医師が、身体の成長や発達、運動機能、視聴覚などを総合的に診察します。大泉門の状態、胸の音、皮膚、歩行の様子などをチェックします。
- 歯科診察:歯科医師が、歯の生え具合や口腔内の状態を確認します。この時期は乳歯の生え変わりが始まる重要な時期でもあります。
育児相談
健診の最後には、保健師や栄養士による育児相談の時間があります。子育ての悩みや不安を専門家に相談できる貴重な機会となります。
健診後の対応
経過観察
健診結果に応じて、経過観察が必要と判断される場合があります。これは必ずしも重大な問題があるということではなく、子どもの成長を慎重に見守るための対応です。
専門機関への紹介
発達や健康に関して、より詳細な確認が必要な場合は、専門機関への紹介が行われることがあります。例えば、言語発達や運動発達に気になる点がある場合などです。早期発見のためにも、安心するためにも、早めの受診がおすすめです。
育児支援
健診では、単に子どもの健康をチェックするだけでなく、保護者への育児支援も重要な目的です。具体的な育児のアドバイスや、利用可能な支援サービスについての情報提供が行われます。
1歳半健診は、子どもの成長を確認し、必要な支援につなげる大切な機会です。不安に思うことがあれば、遠慮なく専門家に相談しましょう。
3歳児健診の準備
3歳児健診に向けて、日頃から子どもの成長と発達に注意を払うことが大切です。具体的には以下のような準備が重要です
- 予防接種の確認:母子手帳で接種状況を確認し、必要な予防接種を遅滞なく受けておく
- 健康記録の整理:これまでの成長記録や気になる症状を整理しておく
- 質問事項の準備:子どもの発達や健康について気になることをメモしておく
3歳児半健診
日常的な子どもの観察
子どもの成長を理解するためには、日常的な観察が重要です。具体的には
- 行動パターンの把握:子どもの遊び方、コミュニケーション、運動機能を注意深く観察
- 発達の変化を記録:言葉の発達、社会性、身体能力の変化を記録する
- 子どもとの対話:子どもの思考や感情を理解するために、コミュニケーションを大切にする
まとめ
1歳半健診は、子どもの心身の成長を確認し、発達や健康に関する不安や課題を早期に発見・対応するための大切な機会です。身体測定や運動機能、精神発達、さらには歯科健診など、多方面から子どもの成長を確認することで、安心と気づきを得る場でもあります。
また、この健診は保護者が育児の悩みを相談できる貴重な時間です。不安や疑問があれば、専門家に遠慮なく伝えることで、適切なアドバイスやサポートを受けることができます。
一方で、子どもの成長は個人差が大きいものです。健診を通じて子どもの個性を知り、必要な支援を受けながら成長を見守ることが大切です。そして、3歳児健診へ向けて日々の観察を大切にし、健診の機会を有効に活用していきましょう。