小学校入学を前にしたお子さんの健康や発達を確認するために実施される「就学時健康診断（就学時健診）」。この健診は、お子さんが安心して学校生活をスタートできるよう、心身の状態を確認し、必要なサポートを早期に検討するための大切な機会です。初めてこの健診に臨む親御さんにとっては、どのような検査が行われるのか、準備や心構えなど不安に思うことも多いかもしれません。
この記事では、就学時健診の目的や内容、当日の流れについて詳しく解説します。さらに、健診で指摘を受けた場合の対応や相談先についても紹介します。

就学時健診（就学時健康診断）とは？

小学校入学を控えたお子さんが受ける「就学時健康診断（就学時健診）」は、市区町村の教育委員会が主催し、入学前にお子さんの心身の健康状態や発達状況を確認するための大切な検査です。一般的に、年長児の秋（入学の5〜6か月前）に実施されることが多く、お住まいの学区の小学校や指定施設で受診します。
当日の検査内容は身体測定や内科検査をはじめ、発達面の簡易チェックも含まれます。この健診は「学校保健安全法」に基づき実施されており、入学後に安心して学校生活をスタートできるよう準備を整えることを目的としています。また、もしサポートが必要なことが分かった場合、早期に対応につなげるきっかけともなります。

就学時健診の目的

就学時健診には、大きく3つの目的があります。

1. 健康状態や発達状況の確認
   お子さんが安心して学校生活を始められるよう、身体や発達の状況を事前に把握します。これにより、適切な支援が必要な場合も早めに対応が可能となります。
2. 特別支援が必要な場合の早期発見
   治療や特別な配慮が必要な場合を早期に見つけることができます。これにより、適切な医療や教育的支援につながりやすくなり、入学後のトラブルを防ぐことができます。
3. 家庭や学校へのフィードバック
   健診結果は家庭に共有されるだけでなく、学校でも参考資料として活用されます。例えば、学級編成や指導方法を考える際に役立てられ、お子さん一人ひとりに合った環境づくりにつながります。

就学時健診の目的は、これらのプロセスを通じて、お子さんが健康かつ安心して新しい環境で過ごせるようにサポートすることです。また、家庭と学校が連携しやすくなるメリットもあります。

就学時健診はいつ行われ、誰が対象になるの？

就学時健診の実施時期は、市区町村によって多少差があるものの、例年10月から11月頃までに行われることが一般的です。対象となるのは翌年4月に新1年生として小学校に入学する子どもたちで、通学区域の小学校から通知書が届きます。
なお、私立か公立かにかかわらず、住民票のある自治体が一斉に案内を出すことが多いため、国立や私立など別の学校を検討していても一度は就学時健診を受けることをすすめられます。

就学時健診で行われる検査内容とは？

就学時健診では、お子さんの健康や発達の状態を多角的に確認するため、さまざまな検査が行われます。これらの検査を通じて、身体的な成長状況や発達の様子を確認し、必要な支援や配慮を事前に検討するきっかけをつくります。ここでは、健診で実施される主な検査内容について詳しく解説します。

② 視力検査でわかることと事前準備

ランドルト環（Cマーク）の切れ目を指し示す視力検査や、カードを使った簡易チェックが一般的に行われています。ここで弱視や視力低下の疑いが発覚するケースもあるため、検査結果に注意しておきましょう。小さい子は検査の手順を戸惑うこともあるので、事前に親子で遊びながら「丸い輪っかの切れ目を指すんだよ」と話しておくとスムーズです。

③ 聴力検査の流れと注意点

ヘッドホン型の機械をつけて、右耳・左耳それぞれから聞こえる微かな音に反応してボタンを押すなどの方法で検査を行います。事前に耳掃除をしてあげる場合でも、耳掃除のしすぎなどで外耳道を傷つけないよう、適度に済ませていただくのが重要です。また、子どもたちの耳掃除については定期的に耳鼻科でに行って医師にしてもらう方も多いです。
検査の結果、音が聞こえづらい場合は後日再検査になるケースもあるので、「話をよく聞いて、リラックスよ」などと、前もってお子さんに伝えておくと、落ち着いて検査できるかもしれません。

④ 内科検診の目的と確認される内容

医師が聴診・触診などを用いて、心臓や肺、腹部の状態を確認します。場合によっては上半身の服を脱いで検査を受けることもあるので、脱ぎ着が楽な服装を意識しておくと安心です。アレルギーや持病、普段から気になる症状などがあれば、問診票に記載しておき、医師や保健師に伝えられるよう準備しましょう。

⑤ 歯科検診とその後

虫歯や歯肉炎、噛み合わせなどを確認します。普段気づかれにくい初期の虫歯「CO（シーオー）」が見つかることもあるため、結果によっては早めの受診が必要です。学校でおこなう集団検診なので簡易チェックとはいえ、もし治療が必要であれば後日必ず歯科医院を受診しましょう

⑥ 発達検査（知的発達の検査）

絵カードや簡単な課題を使い、言語発達や理解力などを確認する「簡易的なチェック」が行われることがあります。標準化された長時間の知能検査というわけではなく、あくまでスクリーニング的な要素ですが、もし気になる点や支援が必要と思われる場合は、改めて専門機関へ相談するきっかけになります。

⑦ 医師との面談や保健師との相談

健診当日は時間に余裕がないケースも多いですが、質疑応答や面談ブースが設けられる場合があります。質問事項がある場合はメモしておくと、スムーズに話しやすいです。
もし健診結果で何か気になることがあったり、発達面で相談したい場合には、保健師や教育委員会の担当部署に繋いでもらえることもあるので、遠慮なく申し出てみましょう。

就学時健診の準備や当日のスケジュール

就学時健診にスムーズに参加するためには、事前準備と当日の流れをしっかり把握しておくことが大切です。当日は保護者と子どもの双方が落ち着いて行動できるよう、時間に余裕を持って会場に到着することがポイントです。
子どもは学校スタッフや上級生の誘導で健診を受けることが一般的ですが、地域や会場によって形式が異なる場合があります。例えば、母子分離の時間がある場合や、親子で一緒に回る形式の場合もあります。以下では、具体的な準備や持ち物、当日の流れについて詳しく説明します。

事前準備：通知書の確認と書類の用意

各自治体から郵送される「就学時健康診断通知書」には、受診会場や日時、必要書類、持ち物などが記載されています。通知書が届いたら、内容をしっかり確認し、健康調査票や問診票など事前に記入が必要な書類がないか確認しましょう。
また、母子手帳を活用して予防接種歴や既往歴を整理しておくと、調査票を記入する際に漏れや誤りを防げます。これらの準備を早めに済ませておくと、当日の朝に焦らずに済むかもしれません。

当日の持ち物と服装選び

当日の持ち物は「就学時健康診断通知書」に記載がありますが、下記のようなものが一般的です。

• 就学時健康診断通知書（受付票）
• 問診票や事前調査票
• 母子手帳
• 筆記用具
• 上履き（子ども用）と携帯スリッパ（保護者用）
• 靴袋（ビニール袋やナイロン袋など、外靴が入るもの）
• 飲み物

服装は身体測定や内科検診がしやすいように、上下セパレートの脱ぎ着しやすい服がおすすめです。ワンピースは避け、髪の長い子どもは測定時に邪魔にならないよう後ろで結んでおきましょう。
保護者の方の服装は普段通りで構いませんが、待機場所が体育館など暖房設備がない場所になることもあるため、天候によっては防寒着なども持っていると安心です。

就学時健診当日の流れ

就学時健診は、以下のような流れで進むのが一般的です。

1. 受付
   指定された会場（就学予定の小学校や自治体施設）に到着後、受付を済ませます。
2. 健診
   健診は複数の検査を順番に受ける形式で行われ、内容は自治体や学校によって異なります。子どもは検査に参加し、保護者は別室で入学に向けた説明会に参加する場合もあれば、親子で一緒に健診を回る形式の場合もあります。
3. 医師との面談
   検査結果をもとに、医師が子どもの健康状態について保護者と話をする場合もあります。当日気になることがあれば、このタイミングで質問が可能です。
4. 相談（必要に応じて）
   健診で問題が指摘された場合や、保護者からの申し出がある場合に個別相談が行われます。医師や保健師、教育委員会の職員、必要に応じて心理士などの専門家が対応します。
5. 解散
   検査結果は当日伝えられる場合もあれば、後日郵送されることもあります。一連の流れは通常2–3時間程度で終了しますが、面談や相談がある場合はさらに時間がかかることがあります。

スケジュールに余裕を持って臨むようにしましょう。再検査が必要と判定された場合は、速やかに医療機関を受診することで、安心して入学準備を進めることができます。

子どもに就学時健診について伝えるコツ

初めての小学校訪問や母子分離での健診は、子どもにとって緊張や不安を感じやすい体験です。そのため、健診の内容や流れを事前に伝え、安心感を持たせることが重要です。子どもの特性や性格に合わせた配慮を行うことで、健診当日をよりスムーズに迎えられるようになります。

① 子どもが安心できる言葉で伝える

不安を感じやすい子どもには、健診の目的をわかりやすく伝えましょう。例えば、「小学校に元気に通えるかどうかを確認するためだよ」や「痛いことはほとんどないから安心してね」といった言葉がけが効果的です。

② 当日の流れや見通しを簡単に説明する

健診当日の流れを親子でざっくりと共有しましょう。「最初に受付をして、背の高さや体重を測るよ。そのあと、耳や歯の検査をするんだよ」といった説明をするだけでも、未知の体験への不安を軽減できます。

③ 子どもが感じやすい不安を軽減する

知らない人とのやりとりや、大勢が集まる環境に不安を感じる子どももいます。事前に「たくさん人がいるけど、一緒にいるから大丈夫だよ」と声をかけたり、視力検査で使うランドルト環のイラストを見せるなど、安心感を与える工夫をしましょう。

④ 子どもが楽しみになるように伝える

「小学校に行ったらお兄さんお姉さんに会えるよ」「教室を見学してみよう」といった、子どもが興味を持ちやすいポイントを伝えると、ポジティブな気持ちで健診に臨みやすくなります。また、「終わったら好きなものを一緒に食べよう」など、ご褒美を提案するのも良い方法です。

⑤ 子どもの特性に配慮する

感覚過敏や新しい環境が苦手な子どもには、特別な配慮が必要な場合があります。不安を感じやすい場合は、自治体や学校に相談し、サポートが受けられるか確認しておくと安心です。また、「先生が背中に耳を当てて音を聞くけど、すぐに終わるよ」など、実際状況を事前に伝えてあげるのも、落ち着いて健診を受ける上で効果的な場合もあります。
子どもが安心して就学時健診に参加できるよう、保護者が準備を整えたり、わかりやすい言葉がけを行うことはとても大切です。

就学時健診に引っかかるって？どんなことが指摘される？

就学時健診で「引っかかる」とは、身体面や発達面などで専門機関の受診や追加の検査が必要かもしれないと学校医やスタッフに判断される状態を指します。指摘を受けることはネガティブなことではなく、子どもが安心して学校生活をスタートできるようサポートを受ける機会として捉えることが大切です。

① 身体的健康状態に関する指摘

健診では、視力や聴力の低下がよく指摘されるポイントです。当日緊張しすぎて、うまく指示に従えなかったということもありますが、指摘を受けた場合は、安心して学校生活を送るためにも早めに専門機関を受診することが大切です。

• 視力や聴力の低下
  • 問題の例：遠視、乱視、片耳難聴など
  • ネクストステップ：眼科や耳鼻科での精密検査。必要に応じて眼鏡や補聴器を準備することで、学習や友達とのコミュニケーションがスムーズになります。
• 身体の発育遅れや異常
  • 問題の例：低身長、肥満、内臓疾患が疑われる場合
  • ネクストステップ：小児科で追加の検査や治療を受けることで、健康面の課題に早めに対応できます。
• 歯科の問題
  • 問題の例：虫歯、かみ合わせ不良
  • ネクストステップ：歯科医院での治療が重要です。これらの取り組みを通じて、子どもが健康面でのストレスを感じずに学校生活を楽しめるよう環境を整えましょう。

② 発達面に関する指摘

言語発達や社会性・行動面についても、健診では問題点が指摘されることがあります。例として言葉の発達が遅れている、集団行動が苦手などがありますが、専門家による評価を受けることで適切な支援が得られる可能性があります。また、まだ6歳と小さいお子さんですので、年齢を重ねるにつれて、解決していくこともありますが、学校生活を行う上でサポートの必要性があるかどうかは専門機関で相談することが重要です。

• 言語発達の遅れ
  • 問題の例：言葉の数が少ない、発音が不明瞭など
  • ネクストステップ：言語聴覚士（ST）のいる医療機関や療育センターで評価を受けることがすすめられます。
• 社会性や行動の問題
  • 問題の例：集団行動が苦手、指示に従えない、落ち着きがないなど
  • ネクストステップ：発達障害支援センターや児童相談所で相談し、必要に応じて心理士による評価を受けます。
• 運動面での遅れ
  • 問題の例：手先が不器用、歩き方がぎこちないなど
  • ネクストステップ：理学療法士（PT）や作業療法士（OT）がいる施設での評価を受け、必要に応じて療育を受けることができます。

③ 感覚やアレルギーに関する指摘

感覚過敏や鈍麻は、特定の音や光が苦手、または痛みに鈍感などの特徴があります。専門機関で評価を受けることで、日常生活での適切なサポートを見つけることが大切です。

• 感覚過敏や鈍麻
  • 問題の例：特定の音や光が苦手、痛みに鈍感など
  • ネクストステップ：児童精神科や感覚統合療法を提供する専門機関で評価を受け、日常生活での支援方法を見つけることが重要です。
• アレルギーや慢性疾患
  • 問題の例：食物アレルギー、喘息など
  • ネクストステップ：かかりつけの小児科医やアレルギー専門医に相談し、学校との連携を図りましょう。特に給食対応など安全に配慮した学校生活が可能になります。

当日、健診が受けられなかった場合はどうしたら良いの？

健診当日に子どもが体調不良や別の都合で受診できない場合もあります。その場合、予備日や別の日程で改めて受診するよう案内されることが一般的です。もし欠席したままの場合は、入学後に医療機関でまとめて検査を受けるケースもあります。
事前に体調管理や日程調整が難しい場合は、行政や学校に早めに相談しておくとスムーズに対応できます。

就学時健診後の相談先はどこ？

就学時健診で発達面や感覚について何か指摘された場合、「どこに相談すればいいの？」と不安になる親御さんも多いでしょう。指摘内容によっては短期的な治療で解決することもあれば、継続的に療育サービスを利用できる場合もあります。

① 発達障害専門の医療機関

専門の小児科や児童精神科、小児神経科などでは、発達検査や各種療育プログラムを実施しています。他機関との連携もスムーズなため、必要に応じて心理士や作業療法士など、チームで総合的にサポートを受けられます。

② 教育委員会の就学相談窓口

市区町村の教育委員会では、特別支援教育や支援学級への入級など、就学先の選択肢に関する相談が可能です。保護者と連携しながら、子どもの状況に合った就学方法を一緒に考えてくれます。

③ 通学予定の小学校との連携

入学する学校に相談するときは、担任の先生だけでなく、学校の養護教諭や特別支援コーディネーターと連携をとりましょう。子どもの配慮事項を共有しておくと、入学後の生活がスムーズになりやすいです。

④ 発達障害支援センター

地域の発達障害支援センターは、医療や教育、福祉など各方面との連携窓口となる機関です。発達検査や専門スタッフによる相談、家族への情報提供など支援が幅広く、相談しやすいのが特徴です。

⑤ 児童相談所

児童相談所では、発達だけでなく家庭環境や育児に関する総合的な相談を受け付けています。交通の便がいい場所に設置されていることが多く、敷居が低いので気軽に足を運べます。

⑥ 児童発達支援

児童発達支援事業所では、就学前の子どもを対象に発達を促すさまざまなプログラムが提供されています。個別指導やグループ療育を組み合わせることで、子どもの特性や苦手分野に的確にアプローチできます。

⑦ 保育所等訪問支援

保育所や幼稚園、小学校などへ専門スタッフが訪問し、子どもの行動面を観察して保護者や施設の先生と連携を図ります。就学前に実際の集団生活での様子を把握できるため、具体的なサポートにつながりやすい方法といえます。

就学時健診で指摘があった時の捉え方とその後の行動

就学時健診で何らかの指摘があると、多くの親御さんは驚きや不安を感じるかもしれません。しかし、「なぜうちの子が…」と落ち込む前に、適切な対応をとることが大切です。ここでは、保護者が心に留めておきたいポイントを解説します。

① 指摘があった場合でも、「問題」と捉えすぎない

「指摘がある＝重大な問題」と考えてしまうと、必要以上に心配したり、子どもに対して否定的な声かけをしてしまう可能性があります。何か特性や支援が必要な場合でも、適切な対応やサポートを行うことで、子どもの潜在的な力を伸ばすことは十分にできると捉えると良いです。

② 早期の対応が将来の可能性を広げる

仮に発達障害の可能性がある場合でも、幼児期から療育や専門的支援を受けることで状況は大きく変わります。特に就学前に個別支援やグループ療育を受けておけば、小学校入学後の集団生活や学習面でスムーズに適応できるケースが多く見られます。早期対応こそが将来の選択肢を広げる鍵になるため、受診や相談をためらわずに行動してみましょう。

③ 支援機関など、地域のネットワークを活用する

市区町村の教育委員会や発達障害支援センター、民間の療育事業所など、活用できる支援機関は多岐にわたります。保護者一人で抱えこまず、専門家や自治体の窓口に相談することで、家庭や学校だけではカバーしきれないサポートを受けることができます。有用な情報や同じ悩みを持つ保護者との情報交換を通じて、子どものための最適な環境づくりを進めていきましょう。

まとめ

就学時健診は、お子さんの健康や発達の状態を確認し、安心して学校生活をスタートできるよう準備を整える重要なプロセスです。健診内容は多岐にわたりますが、そこで受ける指摘は適切なサポートにつながるきっかけとして捉えることが大切です。
就学時健診は、ご家族にとっても入学準備の一環として有意義な時間です。お子さんの特性や必要なサポートを理解し、学校生活が楽しく充実したものとなることが重要となります。