児童発達支援とは?対象者やサービス内容、利用の流れなどをわかりやすく解説!
COLUMN
児童発達支援とは、障害のある未就学の子どもを対象とした、児童福祉法に基づく通所支援のひとつです。児童発達支援事業所や児童発達支援センターなどの事業所・施設に通い、専門的な知識や資格を持った支援員から日常生活に必要なスキルの獲得や機能訓練などの支援を受けることができます。
この記事では、児童発達支援の対象者やサービス内容、利用の流れや利用料金などについて、わかりやすく解説します。
児童発達支援とは
児童発達支援とは、児童福祉法で定められた障害児通所支援のひとつです。主に小学校に就学する前(6歳まで)の障害のある子どもが児童発達支援センターなどの施設に通い、日常生活に必要なスキルの獲得や機能訓練などの支援を受けることができます。
児童福祉法第六条の二の二では、下記のように記載されています。
児童発達支援とは、障害児につき、児童発達支援センターその他の内閣府令で定める施設に通わせ、日常生活における基本的な動作及び知識技能の習得並びに集団生活への適応のための支援その他の内閣府令で定める便宜を供与し、又はこれに併せて児童発達支援センターにおいて治療(上肢、下肢又は体幹の機能の障害(以下「肢体不自由」という。)のある児童に対して行われるものに限る。
出典:童福祉法|電子政府の窓口 e-Gov
以前は未就学児と就学児がともに通う「児童デイサービス」というサービスでしたが、2012年4月の児童福祉法改正によって、未就学児のための「児童発達支援」と、就学児のための「放課後等デイサービス(放デイ)」に分けられました。
児童発達支援の対象者は?
児童発達支援の対象者は、主に未就学の障害のある子どもです。身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)のある子どもが対象になりますが、自治体によってはこれらの障害の診断がなくても、療育(発達支援)の必要が認められれば利用対象になります。
就学児(主に6歳~18歳)は、児童発達支援ではなく放課後等デイサービスを利用します。
児童発達支援ではどんなことをする?
児童発達支援は、対象の子ども一人ひとりの状況に合わせて必要な支援を行うため、その内容は多岐にわたります。大きく分けると「発達支援(本人支援および移行支援)」「家族支援」「地域支援」の3つにわけられます。
発達支援(本人支援および移行支援)とは
発達支援のうち「本人支援」では、障害のある子ども本人に対し、日常生活や集団生活において必要なスキルを身につけるための支援を行います。具体的には、次の5つの領域における支援を行っています。
- 心身の健康や生活に関する領域
- 運動や感覚に関する領域
- 認知と行動に関する領域
- 言語・コミュニケーションの獲得に関する領域
- 人との関わりに関する領域
「移行支援」では地域社会への参加・包摂(インクルージョン)の考え方に立ち、障害の有無に関わらず全ての子どもたちが地域社会の中でともに成長できるよう、事業所から、地域の保育や教育の場へと移行していくための支援を行います。例えば入園や入学など子どものライフステージが大きく変わる際には、子どもが一貫した支援を受けつつも新しい環境に入っていけるよう、丁寧な支援が求められます。
家族支援とは
家族支援では、障害のある子どもの保護者や家族が安心して子育てを行うことができるよう、家族の思いに寄り添い伴走した支援を行います。例えば保護者面談を通じて子育てに関する困りごとをヒアリングしたり、発達状況や支援のニーズを確認したり、子どもへの関わり方を学ぶ「ペアレントトレーニング」などがあります。
地域支援とは
地域支援では、子どもが地域社会で適切なサポートを受けられるような支援を行います。例えば地域の保育園や幼稚園、医療機関、保健所、児童相談所などの専門機関と連携し、子ども一人ひとりの困りごとや支援ニーズ、支援方法を共有したり検討したりします。
児童発達支援の2つの種類
児童発達支援を行う事業所・施設には、大きく分けて「児童発達支援センター」と「児童発達支援事業所」の2種類があります。
※参考※
児童発達支援センター
児童発達支援センターでは、地域の関連機関と連携する際には地域の中核的な役割を担い、障害のある子どもの家族や関係者に対し、専門的な助言や必要な援助を行います。保育所等訪問支援や障害児相談支援など、児童発達支援以外の支援を行う事業所もあります。
児童発達支援事業所
児童発達支援事業所では児童発達支援センターと同様に、通所してくる障害のある子どもやその家族に対して専門性を生かした支援を行います。
児童発達支援センターと比較すると、障害のある子どもやその家族にとってより身近な存在・通所しやすい環境となることを目指して、地域に多く設置されています。
児童発達支援を利用した1日のスケジュールは?
児童発達支援を利用した場合の1日の流れは、幼稚園や保育園に通いながら事業所を利用するパターンや、幼稚園や保育園の代わりに事業所に通うパターンなど、さまざまです。
ここでは児童発達支援事業所の1日のスケジュールの一例を紹介しますが、あくまでも例のため、実際にどんなスケジュールになるかは、該当の事業所や施設に確認してみてください。
① 幼稚園・保育園に通いながら、事業所に通うパターン
幼稚園や保育園のあとに事業所に通う場合は、午後からのスケジュールになります。個別支援(指導・療育)と集団支援(指導・療育)を曜日ごとによって組み合わせている事業所もあります。自治体が判断した受給者証で受けられるサービスの量に基づいて、必要なプログラムと利用回数を選択することができます。
② 幼稚園・保育園の代わりに事業所に通うパターン
幼稚園・保育園の代わりに児童発達支援事業所に通い、支援を受けるパターンもあります。
朝から夕方まで1日を通して支援を行う事業所もあれば、午前だけ・午後だけの支援を行う事業所もあるため、子どもの特性や支援のニーズ、受けられる支援の内容、保護者の仕事の都合などを考慮して選ぶと良いでしょう。
長い時間を事業所ですごすため、食事を摂ったり歯磨きをしたりと、日常生活に関わる動作の支援を受けやすくなるのが特徴のひとつです。
児童発達支援を利用するメリット・デメリット
児童発達支援を利用するメリット
児童発達支援では、子どもの発達についての専門的な知識や資格を持った支援員から支援を受けることができます。そのため、子ども一人ひとりの発達状況や障害特性、困りごとに合わせて、必要で専門的な支援を受けることができるのが大きなメリットだといえます。
また、児童発達支援では、障害のある子ども本人だけではなく、保護者や家族も専門家からの支援を受けられます。子育てや子どもの発達についての悩みを相談することができ、事業所によっては、子どもとの関わり方を学ぶペアレントトレーニングを受けられる事業所もあります。
児童発達支援を利用するデメリット
通いたい事業所や施設が見つかっても、枠が満員の場合はすぐに利用することができません。また、児童発達支援は児童福祉法に定められた障害福祉サービスのひとつなので、自治体が判断した受給者証によって受けられるサービスの量が異なります。子どもの発達状況や特性によっては、希望する事業所や利用日数が認められない場合もあります。
送迎サービスがない事業所や施設に通う場合は、通所が保護者にとって負担になるケースもあるかもしれません。
児童発達支援を利用するためには?
児童発達支援を利用したいと思っても、利用するまでの流れや手続き方法がよくわからないという方が多いかもしれません。市区町村によって細かい規定が異なる場合があるため、実際に手続きを行う場合はまずお住まいの地域の役所に問い合わせてみてください。
ここでは、児童発達支援を利用する際に必要な一般的な流れをまとめます。
1.窓口で児童発達支援の利用相談を行う
市町村の福祉担当窓口や子育て支援窓口、障害児相談支援事業所などに、サービスを利用したい旨を相談します。受給者証の申請の流れや必要な書類は市区町村によって違うこともあるので、気になることはこのときに聞いておきましょう。
2.利用を検討している事業所・施設の見学を行う
自治体にて児童発達支援を受ける必要があると判断された場合は、児童発達支援センターや児童相談支援事業所を紹介されます。実際に利用したい施設を見学しましょう。
3.受給者証を取得するための申請書等を提出する
利用したいサービスが決まったら、相談支援事業所で受給申請に必要な障害児支援利用計画案を作成してもらいます。市区町村にある相談支援事業所に行くか、地域によっては家庭訪問をして聞き取りを行う場合もあります。障害児支援利用計画案は、保護者が希望する場合には、セルフプランとして家族や支援者が作成することもできます。
障害児通所給付費支給申請書、障害児支援利用計画案(もしくはセルフプラン)、持っていれば療育手帳や障害者手帳、医師などの意見書、身元が確認できる書類などをそろえ、自治体に申請します。
申請に必要な書類は自治体によって異なるので、何を準備すればよいか事前に確認しておきましょう。
4.給付決定が行われたら、受給者証が交付される
自治体の調査員が障害の程度や家庭環境、生活状況などに関する聞き取り調査を行います。その上で、受給者証を発給するための利用要件を満たしているかどうか、必要だと考えられるサービスの日数は何日かどうかを検討し、給付決定が行われます。
給付決定が行われたら、受給者証が発行されます。
5.受給者証で認められた内容に基づき、事業所・施設と利用手続き契約を行う
受給者証と障害児支援利用計画(もしくはセルフプラン)を事業所に提示して、サービスを受ける契約手続きをします。利用スタートの際には、子どもと保護者との面談を行い、個別の支援計画(児童発達支援計画)を作成します。
6.実際の利用を開始する
事業所と決めた通所計画に基づいて、利用をスタートします。
児童発達支援を利用するためにかかる費用は?
児童発達支援は、障害児通所給付費支給の対象となる支援サービスです。「障害児通所受給者証」を取得することで、国と自治体から利用料の9割が給付され、1割の自己負担でサービスを受けることができます。
1回の利用料(保護者の自己負担額)は1,000円~1,500円前後としている事業所が多いようです。ただし、おやつ代などの食費や、レクレーション参加費用などは別途実費負担が発生する場合があります。
利用者負担の負担上限額について
障害福祉サービスの利用者負担額には月ごとに負担上限額が設定されており、利用したサービス量にかかわらず、上限額を超えた金額を支払うことはありません。負担上限額は、前年度の世帯所得によって次の4つの区分に分かれています。
区分 | 世帯の収入状況 | 負担上限月額 |
---|---|---|
生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
低所得 | 市町村民税非課税世帯 | 0円 |
一般1 | 市町村民税課税世帯 (所得割28万円※未満) | 通所施設、ホームヘルプ利用の場合:4,600円 入所施設利用の場合:9,300円 |
一般2 | 上記以外 | 37,200円 |
利用料の無償化について
2019年から、児童発達支援の利用者負担額が無償化される制度がスタートしました。無償化の対象は「満3歳になって初めての4月から3年間」であり、子どもの年齢が3歳から5歳の間になります。
無償化にあたっては特別な手続きは必要なく、幼稚園や保育園、認定こども園などを併用している場合は、両方とも無償化の対象になります。
まとめ
児童発達支援では、未就学の障害ある子どもやその家族が、専門的な知識や資格を持った支援員から支援を受けることができます。自治体によっては障害の診断がなくても、療育(発達支援)の必要が認められれば利用対象になります。
保育園や幼稚園に支援員が訪問して支援を行う「保育所等訪問支援」を行う事業所もあります。子どもの発達に気になることがあれば、利用を検討してみてください。